【対談インタビュー】第一生命×ファンドアナリスト 篠田尚子氏 これから資産形成を始めるために大事なことは?<前編>
第一生命では“一生涯のパートナー”として従来の保障に加えて資産形成の面からもお客さまの「wellーbeing」に貢献することを目指しています。「資産形成プラス」では、資産形成に関連する各業界の代表的な存在の方々と対談を行い、コラムとしてお届けします。
第4回は投資信託の専門家として多方面でご活躍されている楽天証券資産づくり研究所副所長兼ファンドアナリストの篠田尚子様に、資産形成をこれから始める方にとって重要なことやNISA、iDeCoの上手な活用方法などについてお話を伺いました。(今回は前後編の前編)
篠田尚子 様(楽天証券資産づくり研究所 副所長兼ファンドアナリスト:写真中央)
聞き手:
泉谷正彰(第一生命ホールディングス株式会社 資産形成・承継事業ユニット長:同右)
若松康平(第一生命保険株式会社 資産形成・承継事業部長:同左)
目次:
・資産形成の盛り上がりと社会の変化
・資産形成を始める際のポイントは?
資産形成の盛り上がりと社会の変化
若松:篠田様はファイナンシャルプランナー、そしてファンドアナリストとして長いキャリアをお持ちですが、その中で業界や資産形成に対する人々の意識の変遷を見られてきたと思います。足元で国が中心となって資産形成を盛り上げようという動きが強まっていますが、篠田様から見てこのような動きについて感じられることはありますでしょうか。
篠田:ここ3、4年、特にコロナ禍前後で大きく資産形成の流れは加速したと思います。今までも国は「貯蓄から投資へ」や「貯蓄から資産形成へ」という旗振りをしていましたが、国、企業、そして国民それぞれの足並みが揃っていなかったというのが実情だったと思います。その背景にはやはり日本のデフレ環境ということが非常に大きく、結果的に現金で持っていてもさほど問題なかったということがあると思います。
ただ、近年潮目は変わってきました。足もとでこれだけ世界的にインフレが進んでいる中で、いよいよ日本でも生活に影響が出るレベルでさまざまな物の価格が上がり、社会の意識も変わったと思います。また、働き方の多様化が進み、それとともに「自分のことは自分で」という意識が顕著になったと考えています。このような中で、より自分ごととしてお金のことを考える方が増えたと感じています。
若松:確かにコロナ禍を契機として、一気に個々人で過ごす時間が増えたと感じます。そのような中で何事も能動的に動かなくてはいけなくなり、生き方だけでなく今あるお金を守る、資産を作るという点についても能動的に考えて動くように変わってきたということでしょうか。
篠田:そうですね。自分が達成したい夢や実現したいことに向かって行くにはどうしたらいいのか、何を優先するかということがコロナ禍では本当に問われたと思います。それによって、この数年間でお金との向き合い方というようなものも根本的に変わったのかなと思いますね。
泉谷:投資という言葉に対するイメージも随分変わりましたよね。これまでは一部のデイトレーダーのような方がやっているイメージだったものが、今は若い方も当たり前のように投資をされている印象です。
篠田:おっしゃる通りだと思います。証券口座を開く若い方のお話を伺っていると、社会人のマナーとして口座を保有しているということをおっしゃられていたりします。ドキッとする部分もあるのですが、すでにそのように投資を捉えている新しい世代の方が入ってきているということを考えると、全体的に意識が変わってきたというように感じますね。
若松:確かに、私が入社した頃は財形貯蓄などが社会人になったら始めるものと言われましたが、今はそれが「投資」に変わっているのかもしれませんね。
資産形成を始める際のポイントは?
若松:投資に対する意識の変化とともに、NISAやiDeCoのような資産形成にかかわる制度が整ってきている中で、これから資産形成をスタートしようという方も大勢いらっしゃると思います。そのような方にとってまずやっておくべきことはなんでしょうか。
篠田:やはり、まずはNISAやiDeCoの手続きを行うなど、資産形成を行うための口座を準備しておくことだと思います。例えば2024年からNISAは新NISAになり、制度が恒久化されます。それにより、始めるタイミングが関係なくなります。
制度の活用にあたっては、自身のライフプランニングを行うことやアドバイザーのような方に相談することなども大事ですが、それは口座を開設した後、もしくはその最中で良いと考えています。全部を整えてから始めようとすると疲れてしまいますよね。まずは最低限の金額でも良いですし、口座だけを開くという形でも良いので、先に資産形成に向けたアクションを起こすことが重要だと思いますね。
若松:まずは行動を起こすということが大切ですね。ただ、最低限の金額を投資にまわすといってもどの投資信託を購入すればいいのか、というのがわからないという方も多いと思います。そのような方にとってはどのようなポイントで商品を選べば良いのでしょうか。
篠田:最初の段階ではなるべく投資先が広く分散されているものが良いと思います。最近執筆した本(※)にも書いていますが、例えば全世界株式や先進国株式、またはバランス型の投資信託など、複数の地域または資産を網羅しているものが良いと考えています。足元ではNISAやiDeCo向けの投資信託のラインナップに資産形成をこれから始める方向けの商品が増えてきています。
その後、もう少し視野を広げて関心のある地域や資産に投資をしていく形です。非常に長い長い道のりですから、最初からパーフェクトな状態にしようと思わなくても大丈夫だと思います。
(※)「【2024年新制度対応版】NISA&iDeCo完全ガイド」(SBクリエイティブ)
泉谷:今のお話と関連をして、ファンドアナリストのお立場としてどのようなところを見て良い投資信託を見分ければ良いとお考えでしょうか。特徴やポイントなどを教えていただきたいです。
篠田:例えばつみたてNISAやiDeCoを活用するにあたって最初に投資信託を選ぶ際には、既にインデックス商品など資産形成に適した商品が選べるような仕組みになっていますので、正直そこまで時間をかけて選ばなくても良いと思っています。
問題はその後、知識を付けて色々な投資先にチャレンジをしたいというときにどうするかということですね。よくお話をするのは「これだ」という一本釣りをしようとせずに、最初は広く候補を出して、徐々に絞り込んでいく、これが最終的に良いファンドにめぐりあえる方法だと考えています。どうしても株のイメージを持っている方が多いので、これからものすごく上がる期待があるものやダイヤの原石のようなものを見つけようとする方がいますが、投資信託ではあまりその考え方はしない方が良いと思います。
絞り込んでいったうえで、取ったリスクに見合ったリターンが得られているか、一番指標としてはシンプルですが、究極的にはそこだと思います。会社によって基準は異なりますが、楽天証券でも出しているファンドスコアは基本的にはその基準に沿って算出しています。そうしたスコアのようなものやシャープレシオ、このあたりを参考に絞っていただければ、大きく失敗することはないと思います。
泉谷:ナンバーワンではなく、上位にいるものを選ぶということですね。そのようなものが結果的に長い時間かけてパフォーマンスとしてはやはり良い可能性が高いということですね。
若松:先ほど著書のお話がでましたが、その中で言及がありました、長期投資を行っている際は保有している商品の状況確認は「年1回」程度確認するのが丁度良い、これはまさにその通りかと思いました。これから始める方もそのような意識を持っておくことが大事ですね。
篠田:私自身もそうしているのですが、やはり頻度を高くして見てしまうと値動きを気にし過ぎてしまうんですよね。ですから、例えばお誕生日など日付を決めて、健康診断と同じくらいの感覚で確認するのが良いと思います。
投資信託、資産形成の専門家として篠田様が感じられている社会の変化や資産運用を始める際のポイントについて丁寧にご説明をいただきました。後編では、NISAやiDeCoの活用方法やライフプランを踏まえた資産形成の重要性についてお話いただきます。
→【対談インタビュー】第一生命×ファンドアナリスト 篠田尚子氏 これから資産形成をはじめるために大事なことは?<後編>
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