【対談インタビュー】第一生命×金融エディター 菊地敏明氏 さらなる資産形成の盛り上がりに向けて<後編>
第一生命では“一生涯のパートナー”として従来の保障に加えて資産形成の面からもお客さまの「wellーbeing」に貢献することを目指しています。「資産形成プラス」では、資産形成に関連する各業界の代表的な存在の方々と対談を行い、コラムとしてお届けします。
第5回は金融情報雑誌「Ma-Do」の編集に長年携わり、数多くの金融機関の取材を行ってきた金融エディターの菊地敏明様に、資産形成に対するお考えや足元の金融機関の取り組みなどについてお話を伺いました。(今回は前後編の後編)
菊地敏明様(株式会社想研 コンテンツ事業部 特任シニアエディター:写真左)
聞き手:
泉谷正彰(第一生命ホールディングス株式会社 資産形成・承継事業ユニット長:同中央)
若松康平(第一生命保険株式会社 資産形成・承継事業部長:同右)
目次:
・資産形成を支えるアドバイザーの求められる役割
・資産形成のさらなる盛り上がりに向けて
・資産形成を支えるアドバイザーの求められる役割
若松:各金融機関などが資産形成に関する対面コンサルティングを強化していますが、それに対して期待することはありますか。
菊地:資産形成だけにとどまらず、お客さまのお金に関する課題を全て引き受けられるような、信頼できるアドバイザーがもっと増えてきてほしいと思います。そんな頼りになる存在がいれば、まだ投資を始めていない方々も前向きに資産形成をスタートできるように思います。
アドバイザーの役割として特に重要なのは、何らかのショックがあった際にお客さまを支えることでしょう。投資において最も大切で、なおかつ難しいことは、マーケットに様々な局面がある中でも投資をやめずに続けることです。リーマンショック以降、株価は概ね上昇基調でしたので、ここ数年で投資を始めた人の中には、株価の低迷を知らない方も少なくないかもしれません。そういう方々はマーケット環境が困難な状況に陥ったときに、投資をやめてしまうリスクがあると考えています。
私自身は「Ma-Do」の編集に携わっている際にリーマンショックを経験しましたが、当時は本当に大変な状況でした。そのような厳しい状況のときにこそ、そばで支えてくれるアドバイザーが必要です。一生涯行う資産形成には長く後押ししてくれる存在も不可欠で、それは安心にもつながると思います。
泉谷:確かに、マーケットの変動がある中で自分の判断だけで長く続けるのは難しいように感じます。
その点、生命保険は長期でライフプランを考えたうえで、お客さまが納得されている限り加入いただくものです。資産形成をご提案する際には、あらためて一生涯、人生の最後までずっとお付き合いするというスタンスでご説明をしていくべきと感じます。
菊地:本来、資産形成ビジネスはお客さまとアドバイザー・企業が同じ方向を向きやすいものだと思っています。つまりお客さまの資産が増えれば、お客さまはもちろんハッピーですし、企業にとっても収益の拡大につながるからです。お客さまとアドバイザー・企業が同じ目標、同じ目線で長期間にわたって関係を構築していく。それこそが真の「顧客本位」の在り方でしょうし、Win-Winの関係になっていくことが望ましいですね。
若松:お客さまやそのご家族に保険の重要性やありがたみを感じてもらえるのはお客さまが入院した時や万が一のときです。一方、資産形成に資する商品であればご提案に対する満足だけでなく、始めた直後から資産が増えるというような楽しみも期待できます。資産形成のコンサルティングを通じて、お客さまとさらなる良い関係を築いていきたいです。
・資産形成のさらなる盛り上がりに向けて
菊地:資産を守るという面でも資産形成は重要ですよね。特に足元のような物価上昇局面では、預貯金だけだと資産が実質的に目減りしてしまいます。インフレが一時的なものでなく、中長期的に続いた場合のリスクにも備えなければいけませんから、そうしたリスクに気づかせ、実際に行動を起こす手助けをするのもアドバイザーの役割です。
若松:その点を意識して積極的に資産形成を行っている方もいる一方で、まだ資産の多くが預貯金のままの方もたくさんいらっしゃるように感じます。当社のお客さまの中にもそういう方がいらっしゃると思いますので、資産を守るという視点でのご説明もしっかり行っていきたいです。
菊地:2024年からは新NISAがスタートしますし、iDeCoなども含めた制度をどう使い分けるのかという視点もこれからは必要になりますね。ですから、アドバイザーの方々には、お客さまの資産全体を把握したうえで、制度の活用も含めた総合的な提案が求められていくのでしょう。
若松:まだまだNISAやiDeCoなどの資産形成にかかわる制度について、名前は知っていても内容を理解できていなかったり、場合によっては勘違いされていたりする方もいらっしゃいます。生命保険でいえば生命保険料控除のような制度もありますので、それらをうまく組み合わせることで、それぞれの特徴を補完できるということですね。
菊地:その通りだと思います。どれが良いというような話ではなく、どう使い分けるかが重要ですね。
泉谷:最後に日本における資産形成のこれからに関してのお考えや金融機関に期待することをお伺いしても良いでしょうか。
菊地:本対談の冒頭でもお話ししましたが、日本では長らく「貯蓄から投資へ」が叫ばれていたものの変化は起こらず、それがここ数年で一気に動き出した印象があります。資産形成は「やる、やらない」という話ではなく、多くの方にとってごく当たり前のものになっていくのではないでしょうか。
少し前に「老後2000万円問題」が騒がれたことも、ある程度は自助努力で資産を形成しないといけないという意識が高まった一因だと思います。ただ、この問題が良い意味でも悪い意味でも注目されたのは、おそらく「2000万円」という数字が独り歩きしてしまったからでしょう。当然のことながら、2000万円で足りる人もいれば足りない人もいる。まさに人それぞれのライフプランによって変わる話です。
人によって異なるライフプランを自身で考えるのはもちろん、専門的なアドバイザーがそのプランニングを支援していく。そのうえでライフプランに基づいた適切な提案をしていくようになれば、非常に意義があると思います。これはおそらく御社を含めた多くの金融機関が目指されている姿であり、アドバイザーの皆さんにとってもやりがいにつながるはずです。
国が所得倍増、資産運用立国ということを掲げている背景には、2000兆円の個人金融資産の活用なくして、日本の成長もありえないという危機感があるのでしょう。つまり、個人の資産形成を通じて資金が企業に向かい、企業が成長する、そしてその成長の果実を個人が受け取り、さらに資産を増やし消費もしていく、このような好循環が生まれていくことが望ましいわけですね。ですから、アドバイザーの皆さんにはまさにその最前線で重要な役割を担っているという誇りをもって、お客さまと接していただきたいと思っています。
若松:資産運用立国ということも言われている中で、我々もそれに貢献できるよう引き続き頑張っていきたいと思います。本日はありがとうございました。
今回の対談では、菊地様が長年取材をされてきた中での資産形成や金融業界に関する変化や足元の動きを中心にお伺いしました。落ち着いた話しぶりの中にも、ご自身のお仕事だけでなく、日本の資産形成や金融業界のさらなる発展に対する熱い想いを感じられた対談となりました。
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