資産形成
【対談インタビュー】第一生命×SBI証券 資産形成のプロに聞く投信ビジネス最前線とファンド選びの秘訣(後編)
【対談インタビュー】第一生命×SBI証券 資産形成のプロに聞く投信ビジネス最前線とファンド選びの秘訣(後編)
第一生命では“一生涯のパートナー”として従来の保障に加えて資産形成の面からもお客さまの「wellーbeing」に貢献することを目指しています。「資産形成プラス」では、資産形成に関連するサービスに係る業界の識者、キーマン的な存在の方々と対談を行い、コラムとしてお届けします。
今回は長く投資信託ビジネスの最前線で個人向けの資産運用サービスの普及に努め、現在は株式会社SBI証券の投資信託部門の顔として旗振り役を務められている上原秀信様に、日本における投信ビジネスの動向や売れ筋のファンド情報などについてお話を伺いました。(今回は前後編の後編)
上原秀信様(株式会社SBI証券 執行役員常務 投資信託部長:写真左)
聞き手:
泉谷正彰(第一生命ホールディングス株式会社 資産形成・承継事業ユニット長:同右下)
若松康平(第一生命保険株式会社 資産形成・承継事業部長:同右上)
目次:
・投資対象の選び方
・SBI証券のブランド戦略
・支出の優先順位が変わってきた
投資対象の選び方
泉谷:いざ資産形成を始めようと思っても何に投資をしてよいかわからないという声をよく耳にします。投信のプロである上原さんにお聞きしたいのですが、投資対象の選び方やポイントはどのような所になるのでしょうか。
上原:いろいろな考え方があるとは思いますが、まずは、投資目的にあった投資対象を選ぶことが大切だと思います。値動きの大きいイメージのある株式も長期でみればつみたて投資との相性は非常によいと言われています。
仮に積み立てをする場合、値動きがあった方が積み立ての効果は大きくなり、投資信託の基準価額が下がったタイミングで買うことで、より多くの口数を買うことができます。その後に基準価額が上がってくるタイミングでは基準価額の上昇メリットをより多く享受できることになります。
バランス型ファンドが良いという意見ももちろんありますが、値動きという観点でいうとポートフォリオを分散してしまうのではなく株式を中心に据えたほうが良いと考えています。
泉谷:投資信託は種類が多く何に投資してよいかはわからないという声をききますが、足元では成長期待のある領域としてインド関連のファンドが注目を集めています。例えば、“特定のテーマや特定の地域”などを対象にするファンドについてはどのように考えればよいのでしょうか。
上原:どちらにもそれぞれ良さがあると思いますので、テーマか地域かという所に優劣はないと思っています。景気の先行指標を織り込むにはどのテーマが即しているかや投資家の好き嫌いも影響してくるでしょう。
政府も言っている、長期・分散・積立を考える上では、重要なキーワードとして「成長」と「分配」の2つがあると思っています。この「成長」に位置するのが、新興国であり特にインドのような人口増加が見込まれる地域や、カテゴリーは全く異なりますが半導体やAIについても、今後様々なテクノロジーに必要不可欠となってくるので「成長」という領域に入るかもしれないと思っています。「分配」という切り口では、巷で話題になっている高配当株そのものや高配当株ファンドが入ると思っています。
一例ではありますが、こういった「成長」と「分配」を切り口にするなど、ご自身の考え方にあったものをポートフォリオにうまく組み込んでいくことが肝要でしょう。そのためにアクティブファンドを賢く活用していくことは有効な手段だと思っています。
若松:インデックス運用から始めた方も、慣れてくればアクティブ運用も見てみるとよいということでしょうか。
上原:そうですね、ただパッシブからアクティブに切り替えるという流れではなく、誰もがインデックス商品は持っているなかで、そこに加える形でより高いパフォーマンスが期待できるアクティブ商品を組み入れる、例えば先ほど出たインド関連や半導体関連の銘側を併せ持つことで、高いリターンを狙っていく、というような考え方が最適だと思っています。
SBI証券の戦略とは
若松:御社はネット証券として、業界でも確固たる存在感を確立されていますが、今後さらに多くの方に資産形成に取り組んでもらうために、どのような戦略をお持ちなのでしょうか。
上原:ネット起点でのお話をさせていただきますが、1つはラインナップ戦略だと考えています。“購入したい商品がSBI証券ならいつでもある”という状態を作ることが重要だと思っています。能動的に働きかけることはもちろんですが、多数の商品を網羅することで、“SBI=何でもある”という姿になれば、自然とSBIを選んでいただくことにつながると思っています。
もう1つはグループ全体としてのブランド戦略です。SBI証券に限らずSBIグループの様々な会社が存在感を発揮し、SBIというロゴがいたるところで目に留まるようにすることで、資産形成を始めたいと思った時に“SBI証券にしよう”と思い浮かぶ状態が望ましいと考えています。
お客さまの資産形成を始めたいというニーズが顕在化する瞬間は様々であり、そのすべての瞬間にアプローチすることはできませんので、グループ一体でのブランディングは重要であると考えています。
若松:いろいろと考えこまれて、数多くの戦略がうまく絡み合って今の姿になっているんでしょうね。
上原:ありがたいことに、SBI証券では新NISAの追い風もあり、2024年1月から6月にかけてのNISA預かりでの投信販売金額は前年同期比で約6.6倍、積立設定金額は2024年6月時点で前年同月比で約3.7倍となるなど、記録的な伸びを示しており、2024年7月11日には、投資信託等の預り残高が15兆円を突破し、お客さまから大きなご支持をいただいています。
支出の優先順位が変わってきた
泉谷:新NISAの始まりにより、個人の方の意識が「まずは銀行に入れる」という当たり前から、「増える期待があるから証券口座に入れよう」というような考え方をする方々も増え始めていると聞いています。詳しく分からなくてもとりあえず始めてみようという雰囲気はかつてないと感じておりますが、上原さんはどのように感じていますでしょうか。
上原:とりあえずで始めた方もいる一方で、特に若年層の方でも、ご自身の将来を真剣に考えている方も多いように捉えています。年金や少子化などの社会問題を身に染みて感じていて、早い段階から資産形成を始めることに優位性があるということを、しっかりと認識されており、金融リテラシーが若年層を中心に向上しているように感じます。
泉谷:たしかに若年層の方のお金に対する考え方の変化は顕著になっていると感じています。他社の方からお聞きしたのですが、40代以降の方は、生活費・住居費などがあって、余裕があったら投資に回すというのが当たり前でしたが、若年層は老後も見据えた資産形成への関心から投資や積立投資等に回すお金の優先順位が高くなっていると聞いて非常に驚きました。
世代による情報の格差も大きくなっていると思っていて、インターネットやYouTubeなどから能動的に情報収集できる方もいる一方、昔ながらで、専門知識のある人に教えてもらいたい方々とのギャップは非常に大きいと思います。
上原:確かに若手社員に聞いてみると、保険はなにから、どう始めたらいいか分からないが、投資であれば、10分程度で口座開設して、周りの人も始めたし“とりあえずオルカンを積み立ててみよう”というような行動に移しやすいという話を何度も聞いたことがあります。
若松:その背景として、好調な相場というところも大きな後押しになったと思いますが、下落相場になった時にその意識がどこまで保てるのかがポイントですよね。
上原:このままの状態がずっと続いていくことはないでしょうから、こういう時こそ対人営業員やアドバイザーの役割が非常に重要になると考えています。環境が変化したとき、不安な時に相談できる人がいるかどうかで長期の資産形成を続けられるかどうかの安心感はずいぶん変わると思います。
若松:中長期で成長期待が高い投資先に積立投資を行うという観点で言えば、下落相場こそ積み立てを行う好機であると、伝えてあげることも大切ですね。
上原:おっしゃる通りです。さらに言えば、今はまさにインフレ環境ですので、従来、預金で置いてきた人はそのままにしておくと、お金の価値が目減りしていくということに気づくことができるかが重要です。NISA制度のバージョンアップやDC制度の投資枠の拡大などもうまく活用いただきたいところです。
泉谷:NISA口座の開設が猛スピードで伸展している一方で、iDeCoについては税メリットの大きさに比べると、まだ使いこなしていない方も多いように思います。そのあたりはどうお考えでしょうか。
上原:おっしゃる通りだと思います。将来のために毎月積み立てていく税メリットのある投資に関する制度という点は同じですが、iDeCoには拠出した掛け金の全額が所得控除となる一方で、老後資金のための年金制度であり、原則60歳まで引き出せないなどの特徴があります。
賢く資産形成を行うためにはiDeCoとNISAのそれぞれの特徴を理解して組み合わせて利用することがよいのではないでしょうか。ともに一昔前では考えられないようなメリットのある制度ですし、より多くの方の資産形成に役立てていただきたいなと願っています。
今回の対談では、上原様から、投信ビジネスの動向や投資対象の選び方、インデックスファンドとアクティブファンドの違いなど、皆さまの今後の資産形成にも活かすことのできるお話を幅広くうかがいました。引き続き「資産形成プラス」では、資産形成に関連するサービスに係る業界の識者、キーマン的な存在の方々との対談をコラムとしてお届けしていきますので、ぜひ次回にもご期待ください。
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