資産形成
【対談インタビュー】第一生命×BNPパリバ・アセットマネジメント 藤原延介氏 投信業界と資産形成の“今”を聞く!<前編>
【対談インタビュー】第一生命×BNPパリバ・アセットマネジメント 藤原延介氏 投信業界と資産形成の“今”を聞く!<前編>
第一生命では“一生涯のパートナー”として従来の保障に加えて資産形成の面からもお客さまの「wellーbeing」に貢献することを目指しています。「資産形成プラス」では、資産形成に関連するサービスに係る業界の識者、キーマン的な存在の方々と対談を行い、コラムとしてお届けします。
第7回はBNPパリバ・アセットマネジメントの投信営業本部マーケティンググループ部長であり、日本の投資信託業界の黎明期から約25年にわたり業界動向のリサーチ、投資啓蒙に従事され、メディアでも様々な情報を発信されている、アセットマネジメント業界のプロフェッショナルである藤原延介様に、最新の投信業界や資産形成の動向についてお話を伺いました。(今回は前後編の前編)
【写真】第一生命日比谷本社 マッカーサー記念室にて
藤原延介様(BNPパリバ・アセットマネジメント株式会社 投信営業本部マーケティンググループ部長 :写真中央)
聞き手:
泉谷正彰(第一生命ホールディングス株式会社 資産形成・承継事業ユニット長:同左)
若松康平(第一生命保険株式会社 資産形成・承継事業部長:同右)
目次:
・投資信託業界の潮流
・投資家の構成が変わってきた
・まだ見ぬ下落相場にこそ顕在化するアドバイザーの重要性
投資信託業界の潮流
泉谷:メディア露出も多い藤原さんに今さらではあるのですが、まずは藤原さんが今までどのようなお仕事を経験され、現在はどのような活動をされているのか、教えていただけますか。
藤原:1998年に三菱信託銀行(現三菱UFJ信託銀行)に入社し支店業務からスタートし、その後ロイター傘下の調査部門リッパー・ジャパン(現リフィニティブ・ジャパン)で投資信託市場の分析に従事し経験を積みました。
その後ドイチェ・アセット・マネジメントの資産運用研究所やアムンディ・ジャパンを経て、現職に至るまで、投資信託業界の動向や個別商品についてのリサーチ、情報発信を約25年にわたり行っています。
最近では、特にESG(環境・社会・ガバナンス)に関するリサーチや情報発信、また新NISAの始まりにより、資産形成を始める個人投資家向けの情報提供ニーズも急増していて、金融メディアでコメントするような機会も多くなってきています。
若松:藤原さんは業界の生き字引的に投信マーケットを見てこられていますが、20年前と比べると業界の潮流はどのように変わってきたと感じていますか。
藤原:投信業界の山も谷も見てきましたが、これまでは国内のGDP成長も伸び悩む中、公募投信残高も60~70兆円で足踏みする状況が長く続いてきました。ところがコロナ禍による経済停滞のあと2021年頃から完全に流れが変わったと感じます。
インフレや円安などの経済的な要因やNISA制度の拡充、ネット取引の広がりなどの影響もあり、直近では国内の公募投信残高は130兆円まで伸展しています。今までは投資に興味を示さなかった層も関心を持つようになるなど、投資家のすそ野自体が広がっています。
投資家の構成が変わってきた
泉谷:そのような中で、販売会社の営業姿勢や取り扱う商品、投資家側の考え方などにはどのような変化があったんでしょうか。
藤原:投資家の構成が変わってきたことは大きい変化だと感じています。投資金額という面では依然としてシニア層が多く資産を保有している一方で、投資家の数という面ではこの5年間で若年層を中心に増加し、若年層の資産形成ニーズへ対応する必要がでてきています。
販売会社としてもどちらに注力するのか、それぞれに応じたサービスの提供の仕方を工夫するようになってきたものと感じています。
泉谷:販売会社の姿勢の変容や、投資信託の売り方の変化もあったと思いますが、その背景には顧客本位の業務運営があったと考えればよいのでしょうか。
藤原:大きく変わったと思います。顧客本位の業務運営が2017年に公表され、7年が経過しました。年月が経つ中で、FD好事例、金融庁の市場ワーキングの議論や、プログレスレポート等も矢継ぎ早に公表され、規制当局が販売会社や運用会社など金融機関サイドに求める部分が明確になってきたように思います。
泉谷:なるほど、何が論点になっているか見える化が進み、見直すべきところをブラッシュアップする動きが増えるなど業界も進化しているということですね。
藤原:はい、若年層の資産形成においては、より良くしていこうという議論が進み、シニア層は元々市場が大きかったので、高齢者保護の視点で“やるべきでないこと”の議論が中心でした。
足元は、新しく投資を始めた層を中心にインデックス投資が急速に広がっていますが、今後、若年層も資金が積みあがりシニア層になっていく中で、インデックス100%でよいという世界でなくなった際に、どのタイミングでリスクを落とすのかなどアドバイスが必要になってきます。個別に色々なニーズや生活スタイルがある中で提案されていくべき話だと思うので、それが今後の課題だと思っています。
若松:いわゆる資産形成期からリタイア後に資産寿命の延伸期に移るタイミングで、画一的なポートフォリオからの組み換えが課題となっているということなんですね。
まだ見ぬ下落相場にこそ顕在化するアドバイザーの重要性
泉谷:ネット環境の急激な進歩で商品情報なども気軽に入手できるようになり、YouTubeやSNSでの発信の影響力も一気に広がってきていると思いますが、どのように捉えていますか
藤原:誰もが手軽に情報を入手できるようになったことはよいことだと捉えています。ただ、いかに情報にアクセスできたとしても、情報の取捨選択は簡単にできるものではないと思っています。
一つ怖いことはここ数年、本当の意味での下落相場はありませんでしたが、今後長期的に下がる局面が続くこともありえます。
その中で今始めた人たちがどういった対応ができるのかということは見えないですし、実際に2022年に短期的に下落局面となった際には積立投資をやめてしまう人も散見されました。下落相場を迎えた時に資産形成の行動をやめる可能性に対して、信頼できるアドバイザーの存在が不可欠になってくると思います。
泉谷:たしかに、資産形成が広がるタイミングでは相場が追い風になり成功体験を積まれた方も多いと推察しています。同時にリーマンショックなどの下落相場の経験がない人も多いと思うので、積立投資による時間分散においては市場の下落がどのように作用するかを理解してもらうことが不可欠です。
お客さまが不安な時こそアドバイザーの真価が問われる時代だと思いますので、お客さまに良質なアドバイスができるように、当社としても資産形成・承継・相続アドバイザーの育成に着手しています。
若松:お客さまが真に長期分散投資の重要性を認識できているかというと、まだ道半ばということでしょうか。
藤原:そうなんです。年利〇%のリターンがあれば、数十年後には複利でこれだけ増えるというシミュレーションしか見ていない人も多いと思います。実際には上がるときもあれば、下がるときもあり、ここ数年は上昇相場が続いてきたという状況なので、スタートとしては出来すぎた感覚もあります。
しかし、やはり長期・分散・積立なので、相場が下がった時こそ大事で、そこで積み上げた資産がその後もう一度花開きます。そこまでいかに投資を継続し耐えられるかが重要であり、“情報提供をしてくれる人がいるかどうか”で資産形成を続けられるか大きく変わってくると思います。
今売れている商品を見てみると、ネット証券で最安かつ売れ筋の商品を買っている方が多く、相場下落時等にどうしたらよいかを相談できるアドバイザーがいない人が多いのではないでしょうか。相場が上がっているときにはなかなか受け入れられないものですが、下落局面にこそ信頼できるアドバイザーの必要性が顕在化すると考えています。
泉谷:直近1年間でみれば2割程度上がっている人もいらっしゃると思いますが、ちょっと今は恩恵がプラスにですぎているような気がします。
藤原:そうですね、資産形成が簡単すぎると考えられている部分もあるので、下がった時にこそ“今止めないことが大事なんです”とアドバイスしてくれる人の存在は大きいと思います。
長年のご経験から藤原様が感じてきた投資信託業界の潮流や、昨今の投資家層の変容、そして、まだ見ぬ下落相場において、信頼できるアドバイザーの重要性についてお話いただきました。後編では、資産形成領域において藤原様が考えている、当社へ期待を寄せていることや今後のあってほしい姿について、さらに踏み込んでお聞きしていきます。
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