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【対談インタビュー】第一生命×SBI証券 資産形成のプロに聞く投信ビジネス最前線とファンド選びの秘訣(前編)

【対談インタビュー】第一生命×SBI証券 資産形成のプロに聞く投信ビジネス最前線とファンド選びの秘訣(前編)

第一生命では“一生涯のパートナー”として従来の保障に加えて資産形成の面からもお客さまの「wellーbeing」に貢献することを目指しています。「資産形成プラス」では、資産形成に関連するサービスに係る業界の識者、キーマン的な存在の方々と対談を行い、コラムとしてお届けします。

 

今回は長く投資信託ビジネスの最前線で個人向けの資産運用サービスの普及に努め、現在は株式会社SBI証券の投資信託部門の顔として旗振り役を務められている上原秀信様に、日本における投信ビジネスの動向や売れ筋のファンド情報などについてお話を伺いました。(今回は前後編の前編)

上原秀信様(株式会社SBI証券 執行役員常務 投資信託部長:写真中央)

聞き手:

泉谷正彰(第一生命ホールディングス株式会社 資産形成・承継事業ユニット長:同左)

若松康平(第一生命保険株式会社 資産形成・承継事業部長:同右)

 

目次:

・近年の投資信託ビジネスの動向

・今のままでは日本の資産運用業界は発展しない

・アクティブファンドにも風が吹いてきている

 

近年の投資信託ビジネスの動向

若松:本日はお忙しい中お時間を頂きましてありがとうございます。政府が「所得倍増プラン」という打ち出しをして以降、個人の方の資産形成ニーズは日々高まる一方だと感じています。

SBI証券さんは資産形成サービス拡大で中心的役割を担われる存在ですが、上原さんは資産形成に関する各金融機関の取り組みの変化や、国民意識の高まりについてどのようにお感じでしょうか。

 

上原:こちらこそ対談の機会をいただきありがとうございます。そうですね、資産形成に国民全体の意識がすごく向いていると感じています。

政府も国策として国民の資産形成を後押しする旗を振り、金融事業者も資産形成領域への取り組みを強めている、そのような機運が醸成されていると肌身で感じています。

私もこの業界に長くいますが、今までの歴史上になかったような雰囲気が着実に広がっていると捉えていますし、個人的にもこんなに喜ばしいことはないと思っています。

 

若松:上原さんは長く投資信託に関連する仕事に関わられていらっしゃいますが、いまや個人の方が資産形成を行うにあたっては投資信託の活用がとても大きな役割を果たす存在だと思います。現在どのような想いをお持ちでしょうか。

 

上原:「投資は信じて人に託す」ということが投資信託の真髄だと思いますが、その前提としての投資に関連する制度が徐々に整備されてきたことの意味はとても大きいと感じています。

241月にNISA制度は新しいものにバージョンアップを果たしましたが、一般の人には遠い存在だった投資を身近な存在にする非常に大きな転機になったといえるのではないでしょうか。

例えば、恒久化されたことで一生涯において非課税制度の恩恵を受けることができ、成長投資枠とつみたて投資枠との合計で元本1,800万円まで拡張された非課税枠も、老後2,000万円問題に近い水準で活用することができます。今まで問題となっていた点が改良改善され、新しい制度に盛り込まれたといえるでしょう。加えて、足元インフレ株高で推移してきた経済環境も合わさり、投資信託に関心が向かっていることを正に実感しています。

20年ほどこの業界に身を置いていますが、かつて銀行窓販が広がっていった時期や、リーマンショック後の株価上昇局面の雰囲気と比べても、この局面でのニーズの高まり・需要の拡大は最も良い形だと捉えています。

 

今のままでは日本の資産運用業界は発展しない

若松:資産形成をめぐるニーズが高まる一方で投資信託業界の競争も激化しているという話も耳にします。御社をはじめとするネット証券の存在は非常に大きくなっていると思いますが、投資家の方が信託報酬などの手数料にシビアになっている点についてはどう受け止めていらっしゃいますか。

 

上原:今でこそ低いコストの投資信託が広がり、当たり前のように最初に選ばれるお客様がふえているのですが、実は私は低コストパッシブ競争の仕掛人の一人なのです。

より多くの皆さまに手にしていただけるように舵を切ったということなのですが、より国民が買いやすい水準の手数料体系のファンドのネットチャネルでの提供を始めました。そこがまさに国内における低コストインデックスファンド隆盛のきっかけになったと認識しています。

 

ただし、一方で現在過熱している低コスト競争には課題も感じており、今のままでは日本の資産運用業界は発展しないのではないかと感じています。

本来ファンドの運用者は、いかに投資家に利益を還元するかという目的のもと、市場パフォーマンスを超過する運用で高いリターンを狙うということが求められます。しかし現状、低コストのものばかりが売れ、大半を占めている状況ですから、積極的に運用リターンを狙うような運用姿勢のアクティブファンドと呼ばれる運用が徐々に後退していってしまわないかと危惧しています。

運用者同士が健全にパフォーマンスを競うことで、会社ごとにこだわりや運用哲学などの特徴が芽生えます。より高いリターンを生む会社が優秀な運用者をそろえ、より付加価値が高い運用手法なども生まれるのではないでしょうか。健全な市場形成に資するという面でも、資産運用会社にはパフォーマンスを追求するという姿勢を貫いてほしいと願っています。

 

泉谷:それでは、低コストインデックスファンドと比べてどういった点が、アクティブファンドの魅力になりますでしょうか。

 

上原:まずは、ベンチマークとする指数に勝っているかではなく、同カテゴリーの中で、上位5%に入るような高いリターンを目指していくファンドこそが在るべきアクティブファンドだと考えています。このようなファンドを増やしていくためには、アクティブファンドのパフォーマンスに関心をもつ必要があります。

運用会社が内部的にチェックして運用担当者に改善を促すだけではなく、商品提供を担う販売会社も、売ったら終わりという姿勢ではなく、販売した後もパフォーマンスを常にウォッチしていくことが求められます。さらに言うと、ファンドのコストのリターンがどのくらいの水準なのかを追うべきであり、適正なコストとそれに見合うリスクを取り続けてリターンをあげていくように促していくことが非常に重要だとここ数年感じています。

ここからは私の持論ですが、長期にわたって指数のパフォーマンスを超過するためには、超過リターンの源泉となる運用リスクを最低でも指数並には取り続けることが必要です。様々な運用会社がアクティブファンドをやられているものの、インデックスファンドを上回るリターンをあげているファンドは全体の2割程度しかないと言われています。

独自に検証したところインデックス並みのリスクすら取れていないファンドも多くあり、そもそものリスクの取り方に問題があるのではないかと思っています。運用会社がそういったところの立て直しを図ればまだまだチャンスはあると思っています。

 

泉谷:日本でアクティブファンドが広がるためには何が課題となっているのでしょうか。

 

上原:従来、投資信託の信託報酬についてみてみると、対面販売による説明負荷がないDC向けの商品の方が低コストなのが常識で、DC用のインデックスファンドが最も低コストというのが一般的でした。

しかしインデックスファンドの低コスト化が一気に進んだ結果、DC向けの商品群よりも低コストになっており、アクティブファンドの信託報酬との差が大きくなってしまいました。個人的なアイデアではありますが、残高が大きなファンドについては“信託報酬を抑えて投資家と収益を分け合う”というような考え方があっても良いのかもしれませんね。

 

アクティブファンドにも風が吹いてきている

泉谷:コストが高くても、しっかりとリターンがでているファンドと、コストが高いのにリターンも取り損ねてきたファンドがあるということでしょうか。

 

上原:コストリターンでみた場合、日本のアクティブファンドは割り負けているものもあるように感じています。それは先ほど申し上げた通り、リスクの取り方ができていないために、リスクに見合うリターンも取れていない、すなわちコストリターン・リスクリターンの2つに問題があると考えています。

 

泉谷:絶対リターンだけをみるのではなく、ファンドのコストやリスクの取り方も見た方がよいということですね。特に日本国内においてはパッシブ競争が一気に進みすぎて、一層アクティブへの風当たりが厳しくなっているので、ファンドマネージャーの方には頑張っていただきたいですね。

 

上原:おっしゃる通りです。インデックスの信託報酬が下がりすぎているために相対的にアクティブファンドが高く感じる人も多いように思います。

 

若松:信託報酬がたとえ1.5%だったとしても、インデックスファンドより+10%以上のリターンをあげる可能性もあるのがアクティブファンドの魅力ですよね。運用者が汗をかいて、ファンドマネージャーの力量でコスト負担に見合ったアクティブリターンをあげているファンドに関しては、決して高いコストではなく、正当な対価という見方も十分にできるのではないでしょうか。

 

上原:その通りだと思います。実は日本にも信託報酬を大きく上回るような、リターンが爆発的に上がっているアクティブファンドも存在しています。こういったコストリターン・リスクリターンの非常に良いファンドが増えてくることが求められています。海外株式ファンドの場合は外部に運用を委託している場合も多いですが、先ほどの例の商品は運用会社自身でポジションを取り運用している意義のあるファンドだと捉えています。

 

若松:そういう意味ではアクティブファンドがこれからの日本を席巻するような可能性も考えられるのでしょうか。

 

上原:可能性は大いにあると思っています。実は当社の販売でも既にその兆候は表れています。当社の売れ筋として、やはりオルカンやS&P500などの指数を参考にしたインデックスファンドは周知のとおり非常に好調です。

調べてみたのですが、こういう中でもオルカンのパフォーマンスを1年・3年・5年のどの期間でも上回っているアクティブファンドは29本(20246月末時点)ありますし、そういったファンドを周知するために情報提供を始めたところ実際に売れ始めています。また公募投信の売れ筋ファンドベスト10で見てみても、今年1月までは、この中に、ブルベアを除くアクティブファンドは1本程度しか入っていませんでしたが、現在はトップ10にブルベア以外のアクティブファンドが定期的に3本は入っている状況まで変化しています。

いずれもパフォーマンスは抜群に良く、アクティブファンドの風が吹いてきていると実感しています。

 

昨今の資産形成領域の盛り上がりに対する上原様の想いや、投信ビジネスの動向、アクティブファンドに対するお考えについてお話いただきました。後編では、投資対象の選び方やインデックスファンドとアクティブファンドの上手な活用方法、売れ筋ファンドなどをお聞きしていきます。

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