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【対談インタビュー】第一生命×ファンドアナリスト 篠田尚子氏 これから資産形成を始めるために大事なことは?<後編>

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【対談インタビュー】第一生命×ファンドアナリスト 篠田尚子氏 これから資産形成を始めるために大事なことは?<後編>

第一生命では“一生涯のパートナー”として従来の保障に加えて資産形成の面からもお客さまの「wellーbeing」に貢献することを目指しています。「資産形成プラス」では、資産形成に関連する各業界の代表的な存在の方々と対談を行い、コラムとしてお届けします。

 

第4回は投資信託の専門家として多方面でご活躍されている楽天証券資産づくり研究所副所長兼ファンドアナリストの篠田尚子様に、資産形成をこれから始める方にとって重要なことやNISA、iDeCoの上手な活用方法などについてお話を伺いました。(今回は前後編の後編)

篠田尚子 様(楽天証券資産づくり研究所副所長兼ファンドアナリスト:写真右)

聞き手:

泉谷正彰(第一生命ホールディングス株式会社 資産形成・承継事業ユニット長:同中央)

若松康平(第一生命保険株式会社 資産形成・承継事業部長:同左)

 

目次:

・NISA・iDeCoとうまく付き合うコツは?

・資産形成とライフプランニングを一緒に考える

・資産形成のこれから

 

NISA・iDeCoとうまく付き合うコツは?

泉谷:NISAやiDeCoの認知度は高まってきていると思うのですが、少し言葉が一人歩きしている印象もあります。あらためてNISAとiDeCoの位置づけについてはどのように理解をしておけば良いでしょうか。

 

篠田:NISAやiDeCoは資産形成のために活用できる「器」として存在しているもので、使っても使わなくても良いもの、あくまでも権利として皆さんが持っているものととらえていただくのが良いと思っています。

器という意味では、個人の名義で「器」を持つことができるというのもメリットです。転職や一度仕事を辞めてまた働く、という際にも使い勝手が良いものだと思います。

多様な働き方が認められてきている中で、例えばフリーランスのような自身のペースで働くというようなことも一般的になっていくのだとすれば、なおのこと「器」を持っておいた方が良いと考えています。

 

若松:NISAやiDeCoという「器」を持っておくことで、会社が用意した「器」に頼らなくて良くなるということですね。まさにこれからの時代にもマッチしている気がします。

個人的な見解ですが、NISAはもう大分身近なものになっていると思う一方で、iDeCoはNISAと比較して少し広がりが遅いように感じています。その辺りについて、何かお考えはありますでしょうか。

 

篠田:2つ大きな要因があると思っています。1つはNISAと比較した手続きの煩雑さです。NISAはすべてスマホで完結できるものがある一方で、iDeCoは一部書面でないと手続きできないものが多いなど手間と時間がかかります。

ただ、どちらの制度にも言えることですが、手間がかかるというのは、それぞれのメリットを得るために必要なことですので、ある種利用者を守るためのものとも言えますね。

もう1つの要因は原則60歳になるまで引き出せないという仕組みです。ここは必ずしもデメリットではないのですが、皆さんの意識の中に先にここが来てしまって、いつでも資金を引き出せるNISAの方を優先して始めようと考える方が多いのだと思います。

 

若松:なるほど。弊社はNISAだけでなく、iDeCoについても力を入れており、個人のお客さまだけでなく、法人のお客さまに向けても対面でのサポートを行っています。このように対面でサポートを行うことについてどのように思われますか。

 

篠田:対面でのサポートは重要だと思います。iDeCo自体は私的年金であって、いわゆる公的年金に上乗せして任意で加入する制度で、本来はライフプランニングありきで加入を検討することが理想だと考えています。現時点で公的年金が何歳からどの程度もらえそうかということを把握したうえで、iDeCoをどのように、どのタイミングで活用していくかなども考えて本来はプランニングしていくものだと思います。

どうしても節税のところにフォーカスがあたりがちですが、節税メリットと同時にやはり公的年金とセットで考えて老後のお金を準備できる制度ととらえるのが良いと考えます。そのため、制度の説明や手続きの面でサポートいただくのはもちろん有用ですが、アドバイザーの方などと一緒にライフプランなども併せて考えていくことが非常に重要だと思いますね。

 

若松:確かに自分の老後の生活資金がどれぐらい必要かを把握して、そのうえで公的年金の受給額なども踏まえてiDeCoの活用を検討することが重要ですね。大半の方にとっては、iDeCoの活用と併せてライフプランニングを行うためのアドバイスを受けるということが必要かもしれません。

 

篠田:アドバイスを受けることで安心感を得られると思いますね。やはりiDeCoの活用には原則60歳になるまで引き出せないという不安があると思いますので、このお金は60歳になるまで置いておいても大丈夫だという安心感をしっかり得ることで、iDeCoの活用にもより前向きになることができると思います。

 

資産形成とライフプランニングを一緒に考える

 

若松:NISA、iDeCoについてはメリットを中心にたくさんお話いただきましたが、年齢やライフステージに応じて使い方は変わってきますか。

 

篠田:そうですね。まずNISAについては使いながら貯める、あるいは増やすことが可能です。新NISAになるにあたり枠も非常に増えて、生涯にわたって使えるようになるので、どのタイミングで貯めて、そして使うのか、ということを決めることがより重要になりますね。そもそもお金は使うためにありますので、結婚資金や住宅購入など、まずは第一目標を決めてNISAを活用してもらうことも良いかと思います。

一方でiDeCoは老後に向けて長く貯めていくものです。ライフプランを検討したうえで、iDeCoにまわせるお金を作っていくことが必要ですね。もしいらっしゃれば、アドバイザーの方などともご相談いただきながら活用いただくと良いと思います。

 

若松:ライフプランニングとともにマネープランニングも行うということは第一生命でも力を入れています。資産形成と保険の話、これを同時に行い、よりお客さまの役に立ちたいということで取り組みをスタートしておりますが、このようなアプローチについて篠田様のご意見を頂けたらと思います。

 

篠田:保険はいわば守りの要素で、万が一に備える、資産を守るというのはライフプランニングを考えるうえでも大事だと思います。一方で資産形成は住宅の購入など使うためにお金を準備するといういわば攻めの要素です。守りの要素と攻めの要素の配分を年齢などに応じて変えていく、それが究極的にはライフプランニングなのだと思います。

今はマーケットの環境が良いので世の中の雰囲気として攻めの意識が強くなっているように思います。一方、損を経験したことがある方などは守りの要素が強かったりと、バランスよくできている方は少ないように思います。個人的な見解ですが、自身でバランスの良い配分を行うことには限界があるのかもしれません。

例えば私はジムに通っていますが、自分で食事に気を付けて、トレーニングをして、と全部やるのは難しいと感じます。実際ジムに行って、トレーナーの方に言われて気づくことがたくさんあります。これは体の例ですがそのようなことはお金のことも含め世の中にたくさんあることだと思います。何事もバランスよくしっかりと行うためには、時には自身が苦手なところも含めて伝えてくれるアドバイザーのような一緒に足並みを揃えて伴走してくれる方が必要だと思います。

お金を増やすという攻めの要素はわかりやすいので、攻めにばかり意識が向きがちです。ただ、実際には守る要素は、悲しい出来事も含めてその場面に直面しないとわからないことが多々あると思います。意識は半々で持っておくことが大事だと思いますね。

また、保険商品についてある程度理解をしてくると社会保障制度にも関心が向くと思います。生命保険料控除や自分が加入している健康保険でどこまで保障されるかなどですね。自助と公助をバランスよく活用していくことが必要だと思います。

資産形成のこれから

 

若松:最後になりますが、日本における足元の資産形成に対する盛り上がり、この動きは今後どのようになっていくとお考えでしょうか。

 

篠田:気がつけば足元の投資信託の残高は追加型公募等でETFを除いても100兆円を超えてきています(※2023年6月末時点)。ついにというように感じますし、芽が少しずつ出てきたというようにも思います。一方で、総合的なマネープランやライフプランを皆が考えるフェーズに来ているかというとまだだと感じます。また、コロナ禍もはさみましたが、ここ5、6年程はマーケットが良好で、げたをはかせてもらっている側面も大きいです。

ですから、全体的な機運が高まっているのは喜ばしい反面、自分自身も決して楽観的になり過ぎないようにと思っています。先ほども申し上げましたが、やはり攻めと守りのバランスを考慮したマネープランの構築や、お金を増やすだけでなく使うためのライフプランニングなどと併せて資産運用を考えるような状況に世の中がなっていってほしいですね。そのような状況になってやっと資産運用、資産形成に対する機運が高まったと言えると考えています。そのようなサポートを私自身も含めて、社会全体で行っていければ良いと思っています。

 

泉谷:我々もそういうところをサポートできるように頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。

 

 

今回の対談では、これから投資を始める方にとって大事なポイントやiDeCoやNISAの上手な活用方法などについて大変わかりやすく解説いただきました。専門家としての深いご知見と丁寧で誠実なお人柄を感じる対談となりました。

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