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【対談インタビュー】第一生命×ファイナンシャルプランナー山中伸枝氏 心とお財布を幸せにする専門家 <前編>

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【対談インタビュー】第一生命×ファイナンシャルプランナー山中伸枝氏 心とお財布を幸せにする専門家 <前編>

第一生命では“一生涯のパートナー”として従来の保障に加えて資産形成の面からもお客さまの「wellーbeing」に貢献することを目指しています。「資産形成プラス」では、資産形成に関連する各業界の代表的な存在の方々と対談を行い、コラムとしてお届けします。

第3回は、一般社団法人公的保険アドバイザー協会の理事であり、ファイナンシャルプランナー(FP)として数多くのお客さまを支援し、FP同士の学びの場である「山中塾」も運営するなどFP業界を牽引されている株式会社アセット・アドバンテージ 山中伸枝代表取締役との対談です。FPの役割やお客さまに寄り添ったご案内をするために必要なことについてお話を伺いました。(今回は前後編の前編)

山中 伸枝 様(株式会社アセット・アドバンテージ 代表取締役:写真中央)

聞き手:

泉谷 正彰(第一生命ホールディングス株式会社 資産形成・承継事業ユニット長:同左)

若松 康平(第一生命保険株式会社 資産形成・承継事業部長:同右)

 

目次:

・「前向きに人生と関わるための伴走者が必要」とFPに

・高齢化社会におけるFPの必要性

・丁寧なヒアリングをもとにお客さまの選択をアシストする

 

「前向きに人生と関わるための伴走者が必要」とFPに

若松:山中様はFP業界を牽引される存在ですが、最初にFPとして活動されるようになったきっかけを教えてください。

 

山中:もともとは一般企業で経理や総務の仕事をしていました。そのときは、大学で専攻していたこともあって経営に非常に関心を持っており、会社の利益が従業員の幸せにつながると思いながら一生懸命仕事をしていました。ですが、不景気になったときにその会社ではリストラを行いました。その時に「会社員人生が終わった、この後はどうしよう」と思われる方が多かったんですよね。

一方で、私が4年ほど留学したアメリカでは、多くの方が自分自身のライフプランやジョブステップなどをしっかりと考えていました。友人たちの中にも、会社をリストラされても、その後同じ業種の会社に行き、元の会社を買収して、元の上司を雇うというような方もいました。そのようにものすごく前向きに自分の人生と関わる人たちを身近に見る中で、日本人はそういうところをもう少し学ばなければいけないのではないかと感じました。そこで会社という目線ではなく、もう少しパーソナルな目線でお一人お一人の人生の幸せに関わっていけたらと思ったのがFPをはじめようと考えたきっかけです。

 

若松:海外ではFPの重要性が広く認識されており、その社会的地位も高いと思いますが、海外でのご経験がFP事業を始めようという想いにつながったのですね。

 

山中:海外では、ちょっと迷ったときに相談できる家庭教師やメンターのような意味合いでFPが当たり前に存在しています。そういった伴走者がいることで、より前向きに決断ができるという面は非常に大きいと思います。

FPを始めた当時は日本でのFPの存在をよく知らなかったのですが、海外におけるFPの存在意義を知っていたからこそ、日本でもこのような仕事が必要だろうなと思い、資格を取ってFP業務を始めたというかたちです。

 

若松:日本人はなかなかFPのような方にアドバイスを求めようとしない印象があります。そのような中で、山中様はお客さまと非常に良い関係性を築いていらっしゃいますが、何か意識していることはあるのでしょうか。

 

山中:お客さまご自身の「エンパワーメント」、潜在的な力を発揮して自発的に行動できるような環境づくりや、会いたい人が来てくれるような仕組みをつくるよう意識しています。

私の20年間のFPとしての道のりでは、インターネットの普及が非常に後押しになっています。最初はブログやコラムを中心に発信をして、読者の潜在的な想いに働きかけていくことを行っていました。

私の想いを綴ることで「こういった人間がいるので、もし気になったら」と発信をして、それによって私に会いたいお客さまが来てくださり、ご相談に乗る中で良い関係性ができあがり、それが徐々に広がっていったということかもしれません。

 

泉谷:現在山中様は数多くのセミナーや勉強会の講師を務めていらっしゃいますが、外国の方を対象にしたものも実施されています。なかなか例のない取り組みかと思うのですが、どのような想いで外国の方向けのセミナーを実施されているのでしょうか。

 

山中:まずはニーズがあるからということ、そして同じ日本に住み、一緒に暮らしている中で、言葉が分からないというだけで社会的な資源が使えないというのは良くないという想いで実施しています。

もともとのきっかけは、確定拠出年金のセミナーや企業研修の講師を務めた際に、外国人の方が困っている様子を見たことです。それならば英語でコミュニケーションを取りましょうか、というのが始まりでした。

 

泉谷:外国の方からはどのようなご相談が多いですか。

 

山中:まず「社会保障の仕組みや国のルールをしっかり教えてほしい」という相談が多いです。たとえばiDeCoやNISA、そのほか年金については活用することでどのようなベネフィットがあるのかなどです。

また、配偶者や同僚が日本人だという方も多いのですが、お金関係の話を誰ともできないということで、相談にいらっしゃる方も多いです。

 

泉谷:社会保障の仕組みなどは日本人でもなかなか理解できないところですが、外国の方であればよりハードルが高くなりますし、相談相手が少ないというのも大変なことだと思います。山中様のご活動は社会にとって非常に意義のあることだと感じます。

高齢化社会におけるFPの必要性

若松:世の中には保険代理店やIFA、弊社であれば生涯設計デザイナーなど、いろいろなかたちで金融に関するアドバイスを行う存在がいます。このような存在と山中様のようなFPにはどのような違いがあると考えていますか。

 

山中:お客さまの「幸せ」の実現に向けて、情報を整理し補うことがFPの仕事と考えています。最近では「wellーbeing」という言葉も広がっていますが、「どのような状態であれば幸せなのか」という根本のところを一緒に考え、それに対して足りない部分があれば、活用できる制度などをお伝えするというようなイメージですね。

金融機関などは最終的に金融商品を活用して資産運用を行う、リスクに備えるというような提案を行うと思いますが、FPはその前の土台づくりやどこに向かうべきかの案内係のような仕事のほうが多いのではないかと思っています。

 

若松:資産を増やすこと、リスクに備えることを目的とした金融商品は、あくまで方向性を決めるためのひとつの材料であるということなのですね。

 

山中:少し前までは画一的な人生設計をされている方が多くいましたが、今はそれぞれの考え方や生き方のバリエーションが増えてきました。それにあわせて金融商品以外も含め、様々な選択肢のなかからお客さまに適したものをご提案していく形ですね。

 

若松:足元では資産形成に関する社会の関心が非常に高まっていると思います。そのような中で、山中様が感じられることはありますでしょうか。

 

山中:お客さまの中で資産形成に対する意識は強まっているものの、必要性がまだしっかりと理解されていないという印象です。

たとえば「親が亡くなったらどうしよう」、「仕事がなくなったらどうしよう」というリスクは見えているのですが、気がついていないリスクもあります。

その中で特に認識すべきなのは「元気で長生きするけれども、インフレによってお金の価値が目減りしていく」というリスクです。資産運用や資産形成というのはある意味ではそのリスクに備える保険ということになりますが、やはりしっかりと準備されている方はまだ少ないと思います。

国民の3分の1以上が65歳以上であるという世界はもうすぐそこです。ですが、職場の中で高齢の方が当たり前に働く、超高齢社会になっていくという現実をまだしっかりと理解しておらず、その中でどう備えるかということの明確な解を持っている方も少ないのではないか思います。

このような環境下において、お客さまにしっかりと寄りそって解を一緒に探していくことがFPの仕事ではないかと思い、私自身も手探りで動いているところです。

 

若松:確かに人生100年時代といわれる中で、寿命が延び、ファイナンシャルプランニングを考えるうえでは「長生き」もリスクになってきているということですね。

 

山中:おっしゃる通りです。70代、80代、90代とこの期間の備えをしっかりと行わなければいけません。そのためにはお金だけでなく、周りとのつながりを保つことや健康状態も維持していかなければいけません。本当にたくさんのことを考えなければならない中で、FPとしてはただ黙っているのではなくしっかりとお客さまを支援していかなければいけないと強く思いますね。

 

若松:いかに豊かに生きるかという視点で考えたときに、経済状況に加えて、人間関係や健康状態もバランスよく維持しなければいけないですね。そのために一緒に伴走してくれる存在というのは非常に重要だと思います。

丁寧なヒアリングをもとにお客さまの選択をアシストする

若松:お客さまと伴走していくために山中様はどのようなことをこころがけて対話を行っているのでしょうか。

 

山中:たとえば、金融機関の営業やIFAの方であれば、お客さまのところに出向く際に商品パンフレットなどがかばんに入っていると思うのですが、私はお客さまへのヒアリングを行うためにノートぐらいしかかばんに入っていません。提案を行うのではなくまずはしっかりとヒアリングをする、ここを強く意識しています。

たとえば家電売り場で炊飯器を買うとき、いろいろなスペックのものがありますが、それぞれのメーカーが自信を持ってつくっており、選ぶのはお客さま、それをガイドするのは販売者です。高齢者2人の家庭であれば5合炊きはいりませんし、高校生の子どもが3人いる家庭であれば美味しく5合のご飯が炊ける炊飯器が必要です。

相談を受けるとき、私は家電商品の売り場の売り子さんだと思っています。ヒアリングをして「お話を聞くとこちらのほうが良いかもしれませんね」、「ご予算によっては1つ型落ちでも良いのではないですか」というように、あくまでも選ぶのはお客さまであり、そこをアシストする役割がFPに近いものだと思っています。

 

泉谷:資産形成も、保険を使ったものや投信、iDeCoなどさまざまな手段がありますが、それぞれの違いを説明してあげることがやはり重要だということでしょうか。

 

山中:そうですね。自社の商品を販売するお仕事の方であったとしても、商品や活用できる制度としてどのようなものがあり、その中で自分たちが提供できるものはこちらだけれども、他の選択肢ももしかしたら合うかもしれませんよ、と自社の選択肢だけに縛られない広い視点を持つことが必要ですね。

 

若松:広い視点を持ちお客さまと接していくということは本当に大切なことだと思います。山中様にお話しいただいたアドバイスは本当にそれがお客さま目線にたった非常に重要なご意見だと思います。

 

 

後編では、本当の意味で顧客に寄り添った案内をするために必要なことや、社会の変化に伴うリスクと資産形成に関してのお客様の変化についてお伺いします。

→【対談インタビュー】第一生命×ファイナンシャルプランナー山中伸枝氏 心とお財布を幸せにする専門家  <後編>

 

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